知っておきたいロゴの基礎知識 ロゴマークとロゴタイプの違いとは?
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ロゴは企業やブランドにとって、アイデンティティ(自己同一性・自分自身であるという主体性や独自性)を象徴する重要な要素です。特に、競争が激しい市場では、独自性と認知度を高めるための工夫が必要です。
新サービスや新商品を発売する際はもちろん、会社や事業の設立、周年記念の際にロゴが制作されます。さらに、合併やリブランディングのタイミングでロゴの刷新が行われることもあります。
そんな企業やブランドには欠かせないロゴですが、ロゴには「ロゴマーク」と「ロゴタイプ」の2種類があることをご存知でしょうか。
今回は、ロゴマークとロゴタイプの違いについて解説します。ほかにも費用感や制作する際のポイントについても触れているので、ぜひ最後までお読みください。
目次
ロゴマークとロゴタイプの違い
ロゴは「文字だけ」「マークだけ」「文字とマークの組み合わせ」の3種類に分けられ、どれもロゴとして扱われますが、文字部分をロゴタイプ、マーク部分をロゴマークまたはシンボルマークと呼びます。
こうした違いはロゴ制作時によく疑問になるポイントです。ロゴ制作を行なう際は必ず確認しておきたい点になるため、しっかり理解しておきましょう。ここからは、ロゴマークとロゴタイプについてそれぞれ解説します。
ロゴマークとは
ロゴマークとは、企業やブランドのイメージを表現するための独自のアイコンやシンボルです。以下のようなロゴマークは、文字を使わずに視覚的な印象を強く与えられます。例えば、Apple の「りんご」、マクドナルドの「M」のマークなどが有名です。
ロゴマークの主な役割は、企業やブランドを視覚的に消費者に伝えることです。なかには社名やブランド名は覚えていなくても、ロゴマークだけは記憶に残っていた、という経験をした方もいるのではないでしょうか。視覚的にアプローチすることで、企業やブランドのコンセプトを視覚的により強く訴求できます。ロゴマークはシンボルマークと呼ばれることもありますが、特に「象徴」という意味合いが強調されています。日本では「家紋」がイメージしやすいでしょう。
また、ロゴマークを用いることで競合との差別化を図ることも可能です。類似商品やサービスを扱っている場合、他社との違いがわかりにくくなることがあります。そこで他社とは異なるデザインや色、形状を採用することで、独自性を主張することが可能です。
ロゴタイプとは
ロゴタイプとは、企業やブランド名を文字のみで表現したロゴのことです。たとえば、「SONY」、「Google」、「Coca-Cola」のようなロゴがロゴタイプに相当します。
ロゴタイプの主な役割は、ブランド名を消費者に覚えてもらうことです。文字をベースにしたデザインであるため、社名や商品名をそのまま読み取ることが可能です。その結果、社名や商品名を覚えやすくなります。
ロゴタイプを語る上で、CI(コーポレート・アイデンティティ)やVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)との関係性も欠かせません。
CIとは企業の事業内容や理念を整理し、統一された企業イメージを構築するプロセスのことです。VIとはCIを視覚的に表現する手段のことで、ロゴやデザイン要素を通じて企業のメッセージを伝えます。
ロゴタイプはVIの一部であり、企業名やブランド名を文字で表現するデザイン要素です。その役割は、企業の一貫したイメージを視覚的に強化する点にあります。このように、CIが企業の根本的な方向性を示し、VIがその方向性を視覚化し、ロゴタイプが具体的な形で認知度を高めます。
ロゴタイプとロゴマークは組み合わせて使用できる
ロゴタイプとロゴマークは、企業やブランドのイメージを効果的に伝えるために組み合わせて使用できます。一般的に「ロゴ」とは、ロゴマークとロゴタイプの両方を指し、これにより消費者にアイコンとブランド名の両方をアピールすることが可能です。
ロゴタイプとロゴマークを組み合わせたロゴの例として、以下のようなデザインがあります。
ロゴマークとロゴタイプを両方制作するメリットは、活用の幅を広げられることです。たとえば、社章にはロゴマークを使用し、名刺などにはロゴタイプを使うことで、用途に応じた効果的なブランディングが実現できます。
このように、ロゴを使用する際はそれぞれの特徴を活かし、イメージ戦略を展開することが重要です。
ロゴ制作の費用感
ロゴ制作にかかる費用は、依頼先や品質によって大きく異なります。依頼先やプロセスを考慮したロゴ制作の費用感は、以下の通りです。
価格帯 | 依頼先 | プロセス |
---|---|---|
2万〜5万円 | 個人 フリーランスデザイナー |
簡単なヒアリング ロゴ制作 |
5万〜20万円 | デザイン事務所 制作会社 |
ヒアリング ロゴ制作 チーフのデザインチェック |
20万円以上 | デザイン事務所 制作会社 |
ヒアリング コンサルティング ロゴ制作 アートディレクターのデザインチェック |
個人やフリーランスデザイナーに依頼することで、2万〜5万円程度でロゴを制作できます。低価格帯ではありますが、デザイナー自身にヒアリングしてもらうことで、ニーズを満たしたロゴを制作できるでしょう。
デザイン事務所や制作会社に依頼すると、中価格帯でも5万〜20万円ほどかかります。多くの場合チーフデザイナーが在籍していて、成果物をチェックしてくれるため、品質の高いロゴを期待できるでしょう。
企業のイメージ戦略を意識したロゴ制作を行なうには、20万円以上かかることもあります。CI/VI制作やコンサルティングを行なうためコストは高くなりますが、マーケティング施策を意識したロゴ制作が可能です。
ロゴのレギュレーション
ロゴ制作を行なう上で、レギュレーションを決めておくことは重要です。一見肩苦しく感じるかもしれませんが、実際にはロゴの魅力を最大限に引き出すには欠かせないものです。
ここからは、ロゴのレギュレーションについて具体例も交えながら解説します。
ロゴのレギュレーションとは
ロゴのレギュレーションとは、ロゴを使用する際の取り扱いルールを定めたガイドラインです。ロゴの縦横比や周囲の余白、使用する色を具体的に指定することで、ロゴの意図やニュアンスを維持しながら効果的に活用できます。
ロゴにおけるレギュレーションの例
ロゴの取り扱いにおいては、以下のようなレギュレーションが設けられることが多いです。
POINT -ポイント-
基本形の設定
アイソレーションの設定
表示色とカラーバリエーションの設定
最小サイズの設定
禁止事項の設定
ここからは、具体例を交えながら解説していきます。
基本形の設定
基本形の設定とは、ロゴの使用状況に応じて、縦型や横型など複数のデザインパターンを用意することです。1つのロゴに対して、以下のようにいくつかパターンを考えましょう。
基本形を設定しておくと縦型でも横型でも統一感が生まれるため、視認性や認知度を高められます。ロゴを見た人が覚えやすくなり、一貫性のあるブランドイメージを確立できます。
アイソレーションの設定
アイソレーションの設定とは、ロゴの識別性や独立性を保つために、周囲に一定の余白を設けることです。以下のように余白を設けることでロゴが他の要素に埋もれず、視認性を維持できるようになります。
余白はロゴのわかりやすいポイントを基準に四方に指定し、他のデザイン要素や文字を配置しないようにします。
表示色とカラーバリエーションの設定
表示色とは、ロゴを構成する基準となる色のことです。これに対し、カラーバリエーションは、ロゴが使用される背景や状況に応じて選択可能な色の組み合わせを指します。印刷物用にはCMYKやDIC指定、Web用にはRGB指定など 両方のパターンの色指定を用意しておきましょう。
さまざまな使用状況を考慮し、縦形や横形など複数のデザインパターンを設定しましょう。
最小サイズの設定
最小サイズの設定とは、ロゴが視認できる最小の大きさを定めることです。
ロゴが小さすぎると判別しにくくなり、ブランドの認識に影響を及ぼします。そこで最小の大きさを決めることでロゴの視認性を保ち、ブランドイメージを損なうことなく伝えられます。
禁止事項の設定
ロゴにおける禁止事項の設定は、ブランドの一貫性と視認性を保つために重要です。ブランドロゴの改変を行なうと視認できなくなり、ロゴの意図やデザインが損なわれるからです。
禁止事項を事前に設定しておくことで、複数のパターンを制作する際もレギュレーションを守りやすくなります。
レギュレーションが重要である理由
ロゴ制作においてレギュレーションが重要である理由は、使用方法を統一することでブランドの一貫性を守れるからです。
ロゴは印刷物、ホームページ、販促グッズなどさまざまな媒体で使用されます。レギュレーションがないまま制作を進めると、それぞれの媒体で意図やニュアンスの異なるロゴが使用されるかもしれません。
レギュレーションを守って制作することでブランドの一貫性が保たれ、消費者に統一した印象を与えることが可能となります。
ロゴを制作する際のポイント
ロゴ制作を行なう際は、以下のポイントを意識しましょう。
POINT -ポイント-
ターゲットを意識したフォントを使用する
流行りのデザインは避ける
他社との類似性に注意する
シンプルなデザインを心がける
さまざまな場所でロゴを使用することを想定する
ここからは、それぞれのポイントについて解説します。
ターゲットを意識したフォントを使用する
たとえば飲食店のロゴであれば、新鮮さや親しみやすさを与えるフォントが適しています。一方で、セキュリティサービスに関するロゴの場合は、信頼性や誠実さを表現するとよいでしょう。
このように、フォント選びはターゲットに合わせて行なうことが重要です。
流行りのデザインは避ける
ロゴを制作する際には、流行りのデザインを避けることが重要です。
流行に乗ったロゴは、一時的に注目を集めるものの、時間が経つと話題性が薄れ、古びた印象を与える可能性があります。特に、社名や商材名に関連するロゴは長期間使用することを考慮し、普遍的なデザインが求められます。
ただし、キャンペーンやサービス、イベントロゴなど、短期間のみ使用する場合は、流行に合わせたロゴを制作するほうが最適な場合もあります。
他社との類似性に注意する
ロゴを制作する際には、他社との類似性に注意が必要です。場合によっては商標権や著作権の問題が関わることがあり、特に商品ロゴが他社のものに似ている場合、裁判に発展するリスクもあります。
著作権に関しては、創作的に表現されたものに対して保護が認められますが、アイデア自体は保護の対象にはなりません。また、既存の作品との『表現上の個性』の違いが重要視され、明確に区別できる程度の差異が必要とされます。
一方、商標権は登録が必要で、類似したデザインがすでに商標登録されている場合には、『使用の差し止め』や『損害賠償』を請求される可能性があります。商標登録されたロゴにはRマーク(®)がついておりその商標を勝手に使ってはいけないことがわかりますので、類似しないよう注意しましょう。なお、商標権と意匠権は異なる権利ですが、立体的なロゴなどの場合には意匠権も関わる場合があります。
シンプルなデザインを心がける
ロゴデザインにおいては、シンプルさが非常に重要です。要素やディテールを過剰に盛り込みすぎると、視認性が低下し、覚えてもらいにくくなります。
ロゴ制作においてフォントを選ぶ際は、1つまたは2つに絞って不必要な装飾を避けることがポイントです。複雑すぎるロゴは煩雑な印象を与え、適応力や柔軟性が損なわれます。
こうした事情を考慮し、シンプルで明確なデザインにすることで、消費者の目を引き、記憶に残りやすくなります。
さまざまな場所でロゴを使用することを想定する
名刺のような小さいサイズから看板などの大きいサイズで使用されることがあり、視認性が高いデザインが必要です。そのため、サイズや配色、エフェクトについて整理しておくことで、柔軟に使用できます。
たとえばボールペンなどのノベルティにロゴを入れる際には、グラデーションを使うと潰れやすいため、フラットなロゴデザインも必要です。また、モノクロ印刷に対応できるデザインにすることで、ロゴの使用範囲が広がります。
ほかにも、ホームページやSNSだけでなく、印刷にも対応することを考慮するなら、過度なエフェクトは避けるべきです。
ロゴマークとロゴタイプの違いを知って効果的に活用しよう
ロゴマークとロゴタイプは、ブランド認知度を高めるための重要な要素です。両者を組み合わせることで、ブランドや企業のイメージをより効果的にアピールできます。
ロゴを使用する際は、ターゲットに合わせたフォントやシンプルなデザイン、視認性を重視することが大切です。また、さまざまな場面での使用を考慮し、レギュレーションを設定することで、ブランドの一貫性を保つことができます。
ロゴ制作を行なう際は、ぜひこの記事でご紹介したポイントを参考にしてみてください。