インバウンドマーケティングの基礎知識と成功のコツ
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インバウンドマーケティングとは、マーケティングの手法の一つ。
今回は、インバウンドマーケティングとはどのようなものか、その考え方や期待効果、プロセスなどについて、従来のマーケティングとの比較を通じて説明。また、初心者が押さえておきたい成功のコツについてもご紹介します。
目次
インバウンドマーケティングとは?
インバウンドマーケティングの考え方と従来型マーケティングとの違い
インバウンドマーケティング(Inbound Marketing)とは、Webサイトやブログ、ホワイトペーパーなどのコンテンツを通じて製品・サービスに関心のある潜在顧客自身からアプローチしてもらい、そこからリードの獲得(見込み客化)、顧客化までを目指すマーケティング手法のこと。
従来のマーケティングの多くは、企業側から消費者側へと向かって外向きに発信されるアウトバウンド型のものでした。
それに対して、消費者が自らの意志で企業側へと入ってくる、つまりインバウンドを軸としたマーケティングであることが大きな特徴です。
従来型のアウトバウンドマーケティングとの違い
企業側から一方的に発信される従来型のアウトバウンドマーケティングは、悪い言い方をすれば押し売り型ともいえます。
消費者は「企業側の好きなタイミング」で広告を押しつけられることになり、自らの都合よりも企業側の都合が優先されることに対する反発や嫌悪も少なからず生じていました。
つまり、マーケティングに対してしつこい、うっとうしい、不快といったネガティブな感情が生まれていたのです。
こうした従来型のアウトバウンドマーケティングは、昨今の購買行動の変化によって大きな局面を迎えることになります。
消費者は何らかの製品・サービスに関心を持ったときに、まず始めにネットでの検索を行うようになりました。消費者自身による「検索を通じた能動的な情報取得」、すなわちインバウンド型のアプローチが最初に行われるようになってきたのです。
インバウンドマーケティングでは、こうして情報を求める潜在顧客に対して「価値のある情報」を提供。そこからリードを獲得(見込み客化)し、さらに顧客化までを目指すという、いわば「顧客との関係性の構築」に重きを置いたマーケティングを展開します。
コンテンツマーケティングとの違い
価値のある情報を提供するということから、コンテンツマーケティングとの類似性を思い浮かべる人も多いでしょう。
実際、魅力的なコンテンツを掲載することで潜在顧客自身に訪問してもらうという点では、コンテンツマーケティングとインバウンドマーケティングはほぼ同じものといえます。
ただし両者の間には、その後のプロセスにおいて大きな違いがあります。
コンテンツマーケティングはあくまで潜在顧客を集めるところまでを意識して、そこに特化したものになっています。
それに対してインバウンドマーケティングでは、訪問からさらに先へと踏み込んでリードを獲得(見込み客化)。
そしてリードの各段階に応じて適切なアクションを行うことで、クロージング(顧客化)までつなげます。
さらに、顧客化しただけで終わりではなく、顧客の満足度を高めてアップセル(グレードを上げた商品を薦めるサービス)やクロスセル(同時に別の商品を薦めるサービス)へと展開したり、他社への紹介をしてくれる推奨者にまで育成したりするなど、一連の営業プロセスも含んだものとなっているのです。
つまり、コンテンツマーケティングはインバウンドマーケティングの入口部分に相当するものであり、インバウンドマーケティングはコンテンツマーケティングを内包した上で、より幅広く行うものだといえるでしょう。
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インバウンドマーケティングに期待される4つの効果
製品やサービスに関心を持った消費者自身からアプローチしてもらうインバウンドマーケティング。
では、そこにはどのような効果が期待できるのでしょうか。
インバウンドマーケティングに期待される効果としては、主に次の4つを挙げることができます。
1.顧客からの印象の良好化
消費者自身が興味を持っているところに対して、「価値のある情報」つまりは役に立つ情報を提供することで、高い満足感を得てもらいやすくなります。言うなれば不快な押し売りの正反対のスタイルであることから、企業に対する印象も良くなり、その後の営業プロセスに与える影響も大きくなります。これ自身が即座に顧客化や売り上げに直結するものではありませんが、「関係性の構築」という観点からは非常に効果のあるポイントになります。
2.見込みの高いリードの獲得
不特定多数に向けて発信するアウトバウンドマーケティングに比べて、インバウンドマーケティングには製品・サービスに関心のある人を中心に訪れてもらえるというセグメント(Segment 購買行動において似通っている顧客層集団)効果があります。そもそも興味が高いところに加えて、わざわざ「検索する」という能動的行動に出ることもあり、潜在的なポテンシャルは非常に高いといえます。
そのため、そこから獲得したリードに関しても、きわめて成約の見込みが高いものになります。
3.マーケティング活動の可視化(データ化)
自社サイト内のコンテンツに訪問してもらう形態であることから、インバウンドマーケティングには顧客の行動分析が容易に行えるという特徴があります。どのような属性の人がどのようなコンテンツにアクセスし、そこからどんなページを閲覧したのか、どんな資料を請求したのか、どの段階でフォームに顧客情報を登録したのかなど、その行動と要因の関係性を把握できるわけです。
つまり、マーケティング活動を感覚的に行うのではなく、マーケティングのプロセスをデータ化および可視化した上で効率的に展開できるのも、インバウンドマーケティングの特徴といえます。
4.マーケティング費用の削減
従来型のアウトバウンドマーケティングでは、広告はなるべく多くのターゲットへとリーチさせる必要がありました。それを実現するためには、高額な費用を払ってマスメディアなどの媒体に広告を出稿するのが一般的だったのです。これに対してインバウンドマーケティングでは、主に自社サイトにおいてコンテンツを展開するため、従来の広告宣伝費用に比べて大きくコストを削減することができます。
また、費用対効果に関しても、不特定多数に向けた広告に比べて高くなることが期待できます。
インバウンドマーケティングの主な流れ
インバウンドマーケティングは顧客との関係性に主軸を置いたマーケティング手法であり、その施策は顧客がどのような段階にあり、どのように次の段階へと転換していくかに応じて展開されることになります。
そのフェーズは下記に説明する4つに大別されるので、それぞれについて見ていくことにしましょう。
1.アトラクト(引き付ける)
潜在顧客を引き付けて、訪問客へと転換させるフェーズになります。
ここで中心となるのが、「価値のある情報」すなわちWebサイトやブログなどに掲載された魅力的なコンテンツとなります。これらによって潜在顧客を引き付け、能動的に行動してもらうことがインバウンドマーケティングの入口となります。
2.コンバート(見込み客への転換)
次は、訪問客を見込み客へと転換させるフェーズ、つまりリード獲得のフェーズとなります。
ただ訪問しもらっただけではリードの獲得にはつながりません。そこからCTA(Call To Action ユーザーに行動を喚起するためのテキストや画像)やLP(Landing Page 一つの商品やサービスを売るための一枚の長いWebページ)、フォームなどを通じて見込み客へと転換させる施策を展開します。
3.クローズ(顧客化)
良質で見込みの高いリードを獲得した後は、クロージング(顧客化)のフェーズとなります。
見込み客の興味に応じて適切なコンテンツを提供したり、リードスコアリング(見込み客の購買意欲の評価)を通じて営業部門に精度の高いリードを渡したりするなどの方法でクロージングを行うことになります。
4.ディライト(満足させる、喜ばせる)
製品やサービスを購入・利用してくれた顧客を、さらに推奨者へと転換するフェーズとなります。
インバウンドマーケティングでは顧客化が最終地点になるわけではありません。そこからさらに、ソーシャルメディアを通じた顧客との対話、購入者向けの適切なコンテンツやオファーの提示などを通じて、企業のファンとして好意的に周囲へと発信してくれる推奨者へと育成します。
いずれのフェーズも顧客との関係性の構築、顧客の育成といった視点から展開されることがインバウンドマーケティングの大きな特徴だといえるでしょう。
インバウンドマーケティングを成功させるコツ
インバウンドマーケティングにおいて行うべき施策は、非常に広い範囲にわたります。
その中でも、特に初心者が知っておきたい成功のコツがありますので、いくつかご紹介しましょう。
潜在顧客を引き付ける魅力的なコンテンツを作る
インバウンドマーケティングの最大の特徴は、最初の接触が「インバウンド」である点。
つまり、潜在顧客がコンテンツに引き付けられて自ら訪問するところにあります。
前述の「アトラクト」のフェーズを成功させるためには、何よりも魅力的なコンテンツ作りが欠かせません。
そして魅力的なコンテンツとは、あくまでユーザーにとって有益で価値のあるコンテンツであるという点を忘れてはいけません。
企業側の論理としては、費用を払ってコンテンツを作成する以上、そこから直接的な購買へとつながることを期待したくなります。
しかし「すぐに売り上げにつなげたい」というのは企業側の理屈であって、ユーザーにとっての目的ではありません。ユーザーにとって有益で価値のあるコンテンツとは、そこから得られる情報によって、どのようにユーザー体験を想像できるか、自身のユーザー体験にどのように役立つかといった観点から判断されるものなのです。
また、精度の低い情報も氾濫する現代にあっては、正しい内容の情報を伝えることにも大きな意義があります。
そのためインバウンドマーケティングにおいては、まずは顧客との関係性を深めるきっかけとなるための、魅力的なコンテンツ作りがきわめて重要になるのです。
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ユーザーの各段階に応じた継続的かつ適切なフォローを行う
先述したとおり、インバウンドマーケティングでは、潜在顧客から見込み客へ、顧客へと変遷していくユーザーの段階に応じてマーケティング施策を展開することになります。
そして、この各段階において、適切なフォローを継続的に行なっていくことがインバウンドマーケティングの成功には欠かせません。
インバウンドマーケティングの施策は、広告を打って終わり、サイトに誘導して終わりといった一度きりのものではなく、あくまで顧客育成のための継続的なものなのです。
そのためには、アクセス解析やユーザー行動の分析を詳細に実施する必要があります。
ユーザーが購買プロセスのどの時点に位置しているのか、そこでどのようなコンテンツに興味を持っているのか、どのコンテンツやアクションに応じてどのような行動を取るのかなど、それらの分析結果を把握した上で、適切なコンテンツの提供や営業活動を行っていくことが大切なのです。
マーケティングと営業両部門の連携を密にする
インバウンドマーケティングはマーケティングと銘打ってはいるものの、実際にはマーケティング部門のみで完結する施策ではありません。
ここまでに説明してきたとおり、インバウンドマーケティングはリードの獲得だけでなく、その先のクロージング、さらには推奨者への育成など、多分に営業プロセスを含んだものになっています。
このことから、インバウンドマーケティングのメリットとして営業とマーケティングの連携が密になるという点が挙げられることもありますが、逆に連携を密にしなければ成功は遠のくとも言えるでしょう。
例えば、マーケティングでどのようなリードをどれだけ獲得するのか、それに対して営業がどのようにクロージングを行うのか、また営業が顧客とのやりとりの中で直接得た知見をどのようにマーケティングにフィードバックするかなど、マーケティング部門と営業部門がうまく連携することで成功が近づきます。
また、両者の連携に際しては、互いにどの範囲でどこまで責任を負うのか、その分担を明確にしておくのが良いでしょう。
マーケティング部門が営業部門に渡すリードの質と数、あるいは営業部門が達成すべきクロージングの数など、異なる部門同士の連携だからこそ、そこには成功のための工夫が必要となるのです。
ツールの活用でより効果的にインバウンドマーケティングを実践
潜在顧客を引き付けるところから顧客化、さらには推奨者に育成するところまでフォローするインバウンドマーケティングは、その対象は極めて広い段階に及びます。
また、各段階における具体的な施策についても、コンテンツの作成やCTAなどの設置、ユーザー行動の分析、リードスコアリング、ホワイトペーパーやメールの送付など、非常に多岐にわたっています。
これらの実践を口に出して言うのは簡単ですが、実行するのはとても難しいこと。
特に異なる部署間での連携で上流から下流までのアクションを効率的に行うとなると、従来とは異なるスタイルで取り組む必要も出てくるなど、難易度の高い挑戦になることでしょう。
そこで役に立つのが、インバウンドマーケティングに特化したツールの存在。コンテンツの提供やアクセス解析、行動分析といったユーザーの段階に応じた施策の実行から、異なる部署間の連携をサポートする機能まで、インバウンドマーケティングの施策展開に応じた機能を備えています。
もちろん、各施策は個別のツールを使ったり、あるいはツールなしで進めたりすることも可能でしょう。
しかし、統合されたプラットフォームを用いれば、はるかに簡単に進めることが可能になるのです。
こうしたインバウンドマーケティング向けツールの導入や活用にあたっては、マーケティングのプロに相談するのがおすすめ。
弊社シスコムでもインバウンドマーケティングの支援を行なっておりますので、ぜひご相談ください。
まとめ
インバウンドマーケティングとは、従来のアウトバウンドマーケティングとは異なり、潜在顧客自身に自らの意志でアプローチしてもらうマーケティング手法のこと。そこからリードの獲得(見込み客化)、クロージング(顧客化)、さらには推奨者への育成まで、顧客との関係性の構築を重視しています。
また、良質なリードの獲得と、そこから期待される高い成約率もインバウンドマーケティングの大きな特徴といえます。
インバウンドマーケティングの施策はユーザーの段階に応じて実施され、アトラクト、コンバート、クローズ、ディライトの4つのフェーズに大別されます。そして、各段階に応じて適切かつ継続的なフォローを行う必要があり、そのためにはマーケティング部門と営業部門の緊密な連携も欠かせません。
インバウンドマーケティングの対象および実施項目は広範かつ難易度も高いため、効率的に進めるためにはツールの利用もおすすめ。ツールの導入や活用にあたっては、まずはマーケティングのプロに相談してみましょう。